初めまして、私は紀伊半島の南、熊野市でひもの屋しあわせうおを開いております、石本法夫と申します。
私が干物屋を開店する前は、市場で魚を取り扱っておりました。
熊野市は熊野灘に面した、海の恵みがとても多い町です。採れる魚も種類も多く、おいしい魚が毎日水揚げされています。そこで水揚げされた魚を、漁師の方から小売の方へ、繋ぐ役割を市場ではしていました。
そんな私がなぜ干物屋を初めたのか、それを話す前に1つ、話しておかないといけないお店の話があります。
しあわせうおの店舗のある場所には、浜口商店という地元の方に愛された干物屋さんがありました。もちろん市場のころ、私たちのお客様でした。
ある日浜口商店の代表の浜口さんから、お店を閉めようとしているという話をうかがいました。
それを聞いて、私は地元の人に愛された、伝統のある干物の味が消えようとしていることに、「もったいない」「さみしい」と強く感じました。
干物は日本の伝統食です。地元の人に愛された干物の味が、今消えようとしているのを知って、自然と私の口から出てきた言葉は、「浜口商店の味を、自分が受け継げませんか?」というものでした。
言ったあと、自分でもびっくりしました。でも、とても自然でした。その話を聞いた時、自分にできることは、この味を未来へ受け継いでいくために、おいしい干物を作っていくために立ち上がることだと思いました。
浜口さんには、今でもレシピや味の監督をしていただいております。
今は浜口商店の味を受け継いでいくことで一生懸命です。
そのうち、しあわせうお独自の「おいしい」も実現したいと思っております。
そのためにまずは、今まで通りの作り方で、今までお通りの味の再現をしっかりとしていくことだと考え、日々干物作りと向き合っております。
浜口商店を引き継ぐときに、新しいお店の名前を決めないといけませんでした。
石本商店などありきたりな名前ではしっくりこないと思って毎日悩んでおりました。
その時ひょんなタイミングで、
「あなたはハンドルネーム(インターネットのニックネームみたいなものです)でしあわせな犬と名乗っているのだから、
それをとって、しあわせな干物だからしあわせうおと名付けではどうか?」と言われました。
その時は冗談みたいな感じだったのですが、
次の日、また次の日とどんどんその名前が自分の中で考えていたお店のイメージとしっくりくる不思議な感覚が強くなっていきました。
しあわせなうおの幸せとは。
作っている人の幸せ、生産者として責任と誇りを持って、干物を作ること。
お客様の幸せ、おいしい干物を食べて思わず笑顔になること。
生産者の方の幸せ、自分が採ってきた魚が、食卓に並んで喜ばれていること。
関わった人全てを幸せにする、幸せのハブとして、
わたしは「しあわせうお」で皆様と一緒に、幸せになりたいと思っています。